副業について、最近メディアでもよく目にするようになりました。
背景として、働き方改革の一環として、政府が副業を推進したことがあります。
それに伴って、公務員の副業も解禁されたのか?
今回は、法律を読み解きながら、見ていきましょう。
これから副業を考えている公務員さんは、1回読んでおいた方がいいです。
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公務員の副業は解禁された?
2020年2月現在、公務員の副業は原則解禁されていません。
働き方改革の一環として、政府は副業を推進することとなりましたが、公務員の副業については、下記のとおり国会答弁にてやりとりがあります。
第193回国会質問主意書質問第397号「公務員の副業に関する質問主意書」と、
答弁第397号「衆議院議員井坂信彦君提出公務員の副業に関する質問に対する答弁書」
○質問
一 政府として、公務員の兼業・副業に対して、現在、また、将来的な見通しについてどのような見解を有しているのか。
二 政府として、地方公務員の兼業・副業に対して、現在、また、将来的な見通しについてどのような見解を有しているのか。
○答弁
一及び二について、
兼業の制限については、今後も現行制度の下で適切な運用が行われる必要があると考えている。
以上より、公務員の副業について、法律を改正して行われるような、大規模な副業解禁は今後しばらくはないと言えます。
ただし、2019年3月には、公益的活動等に伴って社会通念上妥当とされる範囲の報酬を得るという意味での副業は、国家公務員において解禁されました。
これに伴い、地方公務員においても、同様のケースにおいては副業が認められる、といったように多少の副業解禁は進んでいるようです。
公務員の副業禁止に関係する法律について
公務員の副業については、国家公務員法及び地方公務員法において定められています。
これに違反すると懲戒処分となり、最悪の場合、職を失うこととなります。
そのような事態とならない為にも、きちんと法律について学んでおきましょう。
国家公務員の場合
国家公務員の場合、国家公務員法によって副業が禁止されています。
国家公務員法第103条【私企業からの隔離】
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
報酬の有無を問わず、営利企業の役員になったり、自ら営利企業を営んではいけない、という内容となっています。
仮に営利企業の役員となる場合、人事院の許可(所轄庁の長に権限委任されています)が必要です。
また、この条文に関しては罰則規定があります。
国家公務員法第104条【他の事業または事務の関与制限】
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
営利企業の役員兼業や、自営兼業以外の、報酬を得て行う兼業を規制しています。
事業又は事務に『継続的または定期的に従事する』場合を指しています。
上記又は事務に従事する場合、内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可が必要です。
この条文に罰則規定はありませんが、違反した場合、懲戒処分の対象となります。
地方公務員の場合
地方公務員においては、地方公務員法で副業が禁止されています。
地方公務員法第38条【営利企業等の従事制限】
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
国家公務員法で規定されている2つの条項について、地方公務員法では1つにまとめられています。
ここでも、
・営利企業の役員になれないこと
・自分で営利企業を営んではいけないこと
・報酬をもらって働いてはいけないこと
が規定されています。
ただし、地方公務員法の場合、自治体ごとに許可の基準を定めることが可能です。
地方公務員法第38条の2
人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
これにより、地方公務員は国家公務員と比較して、兼業に関する規定は緩和されている場合があります。規定・規則・内規等で定められていますので、副業を始める際は、自治体の総務・人事にご確認ください。
公務員の副業禁止には、3つの原則がある
ここまでで、地方公務員も、国家公務員も、所轄庁の長の許認可があれば、副業をすることが出来ることが分かりました。
ただし、許認可制であるとはいえ飲食店でアルバイトをしたい!という申請に、許可が下りることはありません。なぜこのように副業を禁止しているかといえば、以下のように、3つの原則が法律において定められていることによります。
信用失墜行為の禁止
(国家公務員法第99条)
職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(地方公務員法第33条)
職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
信用失墜行為とは、『職の信用を傷つける行為』『職員全体の不名誉となるような行為』です。
例えば、公務員が深夜のコンビニでアルバイトをしていて、翌日デスクで寝ている、なんてことになれば、その人の信用は勿論、公務員全体に対する信頼もなくなってしまいますよね。
そう考えると、前で述べた、『飲食店のアルバイトに許可が出ない』というのは、当然ですよね。
守秘義務
(国家公務員法第100条)
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
(地方公務員法第34条)
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
守秘義務について、『職務上知り得た秘密』と『職務上の秘密』の2つがあります。
例えばアルバイトをしていて、ふとしたきっかけで『職務上知り得た秘密』(例えば固定資産課税台帳の情報や、公開前の道路拡幅事業の情報等)を話してしまった。その結果、個人や企業が不利益を被ってしまった。
こいうった状況を避けるための条項です。
職務専念の義務
国家公務員法第101条)
職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
(地方公務員法第35条)
職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
副業していると、業務中も、「○○はどうなのかな…?」「□□のことが心配だな…」なんて考えることがあるかもしれません。
そうなると職務に専念出来ていないですよね。株式やFX等の投資は、公務員でも認められていますが、これも業務中はもってのほかです。
公務員の副業は解禁されたのか?まとめ
公務員の副業は法律の改正的な部分で考えると、まだまだ解禁されていません。
ただし、2019年3月、働き方改革によって公益活動等に従事する、という副業が認められ、公務員の副業に対する制限も、今後変わっていく可能性があります。
2020年2月現在、公務員が可能な副業としては、
・一定以下の太陽光発電
・小規模な不動産
・小規模な農業
・講演・執筆活動
・FX・株等の金融商品
となっています。
なお、ブログによるアドセンス、アフィリエイト報酬は、人事院に確認したところ、以下の通り回答がありました。
国家公務員がブログでアフィリエイト報酬・アドセンス報酬を受取ることは、国家公務員法第103条及び人事院規則14-8等によって制限されているため、副業としてブログ等を運営することはできません。
となっております。
地方自治体では、独自で規則を制定することが可能である為、あなたの自治体がブログ収入OKかどうかは、自治体の総務・人事関係部署にお問い合わせください。
当サイト運営者は、自治体総務部に確認を取り、運営しております。
くれぐれも、法を犯すことのないよう、健全な副業ライフを!
それではまた('ω')ノ